会期延長特別企画Ⅴ 桒山賀行作品展

房総から聞こえる鑿音 木彫家長谷川昻の記憶」会期延長特別企画の第五弾。
長谷川昻と同じく伝統木彫の系譜に位置し、現代日本を代表する木彫作家の一人である彫刻家 桒山賀行氏の作品展示が始まりました。

愛知県常滑市出身で、彫刻家 澤田政廣の内弟子として修行を積んだ桒山氏。辿っていくとその系譜は高村光雲まで遡ることができます。桒山氏は正に現代進行形で近現代日本木彫史を歩む作家です。

伝統の系譜にありながらも、桒山氏はその堅いイメージに囚われることはありません。桒山氏はあらゆる造形手段とアプローチで木に迫ります。高次の具象表現は堅実さも内包しつつ、その木彫は、「作家と素材の近さ」を感じさせ、彫刻家が木と共に創りあげた作品であることを実感させます。

今回の特別展示では触れることのできる作品たちが並びます。
作家らしく自ら多くを論じることはありませんが、桒山氏は日本における触れる鑑賞を、「バリアフリー」や「ユニバーサル」という言葉が一般化するそのずっと以前から実践してきました。

表現の形は異なりますが、その作品には長谷川昻と共通する実直さが宿っているようです。

お越しの際には是非直接作品に触れてみてください。
木彫家たちの鑿音の共演を、美術館にてご鑑賞いただければ幸いです。

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会期延長特別企画「記憶を繋ぐ木彫家たち」について:

この企画展は、「 房総から聞こえる鑿音 木彫家長谷川昻の記憶 」の会期延長に際して、異なる角度から木彫の魅力に迫るための特別展示です。それぞれの感性で現代を生きる5人の木彫家に焦点を当て、下記の会期で、第3室を活かした展示を行います。

・最上 健 5月17日(水)ー 6月19日(月)
・岡本和弘 6月21日(水)ー 7月24日(月)
・高見直宏 7月26日(水)ー 8月28日(月)
・渡部 直 8月30日(水)ー 10月2日(月)
・桒山賀行 10月4日(水)ー 11月12日(日)

5人の作家の共通点は、木を材にした彫刻表現を探究する点にあります。長谷川昻もそうであったように、木彫家は、自然の一部として生きていた樹木を相手に、彫刻材としての木と向き合わねばなりません。アトリエに立てた丸太はそれだけで圧倒的な存在感を放ちます。作家は、その声に耳を傾けざるを得ず、材との距離や自身の造形哲学、葛藤が各人の木彫表現として表れます。

5人の作家と長谷川昻との直接の接点はありません。しかしながら、伝統木彫や工芸、芸術大学の系譜に位置する各人は、それぞれの立脚 地から自身の表現を示し、その作品は自ずと木彫文化の記憶を宿すものとなります。記憶の繋がりは、継承となるものか、また別の道を開拓するものか、あるいは将来的に交わるものとなるか…

そこに在る作品と、その作品が含むあらゆる要素に思いを巡らせ、鑑賞を楽しんでいただければ幸いです。
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