「房総から聞こえる鑿音 木彫家長谷川昻の記憶」会期延長特別企画の第二弾。
現代に生きる気鋭の木彫家 岡本和弘氏の作品展示が始まりました。
岡本氏は、富山県南砺市において大野晃一氏に師事し、伝統工芸井波彫刻(社寺彫刻、欄間彫刻、山車彫刻など)の技術を学びました。7年の年季奉公を終え独立した後は、豊橋市内にスタジオ575設立し、伝統に立脚しながらも現代的な木彫表現を探究しています。また、岡本氏は、長谷川昻と同じく、日展や日本彫刻会に所属し、それぞれの展覧会において「伝統工芸」の枠を越えた大型の木彫作品の発表を続けています。
岡本氏は制作について下記のように語ります。
「門を出でれば 我も行く人 秋の暮」 という与謝無村の句を好む
日常と非日常のゆらぎ、その中にある本質を見出したいという思いから鑿を振るう
作品が在るということで、その空間の「日常」と「非日常」は曖昧となる
そんな装置ともなる作品を、日々古ぼけた座布団の上で、門も出ずに作り続けたい
一部の作品には直接触れることもできるこの展覧会。
木彫家たちの鑿音の共演を、美術館にてご鑑賞いただければ幸いです。
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会期延長特別企画「記憶を繋ぐ木彫家たち」について:
この企画展は、「 房総から聞こえる鑿音 木彫家長谷川昻の記憶 」の会期延長に際して、異なる角度から木彫の魅力に迫るための特別展示です。それぞれの感性で現代を生きる5人の木彫家に焦点を当て、下記の会期で、第3室を活かした展示を行います。
・最上 健 5月17日(水)ー 6月19日(月)
・岡本和弘 6月21日(水)ー 7月24日(月)
・高見直宏 7月26日(水)ー 8月28日(月)
・渡部 直 8月30日(水)ー 10月2日(月)
・桒山賀行 10月4日(水)ー 11月12日(日)
5人の作家の共通点は、木を材にした彫刻表現を探究する点にあります。長谷川昻もそうであったように、木彫家は、自然の一部として生きていた樹木を相手に、彫刻材としての木と向き合わねばなりません。アトリエに立てた丸太はそれだけで圧倒的な存在感を放ちます。作家は、その声に耳を傾けざるを得ず、材との距離や自身の造形哲学、葛藤が各人の木彫表現として表れます。
5人の作家と長谷川昻との直接の接点はありません。しかしながら、伝統木彫や工芸、芸術大学の系譜に位置する各人は、それぞれの立脚 地から自身の表現を示し、その作品は自ずと木彫文化の記憶を宿すものとなります。記憶の繋がりは、継承となるものか、また別の道を開拓するものか、あるいは将来的に交わるものとなるか…
そこに在る作品と、その作品が含むあらゆる要素に思いを巡らせ、鑑賞を楽しんでいただければ幸いです。
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